冬迎えの声

遠くの静寂から音が聴こえる
それは聴こえないものなのだけれど
確かに僕には聴こえるんだ

少し冷たくなってきた風は
くたびれた外套と遊びながら流れていく
誰もいない道 そこには確かに僕がいる

月明かりのぼんやりしているのを見上げて
えらく縮こまった空気を感じていると
遠くの静寂はゆっくり語りかけてくる

「明日の夜には冬迎えの祭典だねぇ
 馭者の五角形、カペラが踊りだしたら、それが合図さ
 君みたいな淋しい夢想銀河を持った人なら
 きっと見えるはずだから
 あの影から来ると良いんだよ」

透明で、平坦な声は
一つのようにも三つのようにも
(または数知れぬくらいにも)
僕の耳だけに届いてきた
(もっともただそう感じただけだけれど)

「プロキオンがやって来る頃には
 もうカペラはすっかりご機嫌だよ
 だから光雲星団の奴らなんて
 楽しくて仕方ないって感じなんだ
 君もきっと楽しめるさ
 だから、あの影から来ると良いんだよ」

それを最後に声はどこかへと溶けていった
けれどそんな事を聞かなくたって
僕はちゃんと知っている

シリウスがいつも遅れて来る事を
彼が来る頃には祭典はすっかり終わりに近い事を
けれどその時こそ祭典が一番輝いて綺麗な事を

ダイヤモンドを描く綺麗な光は
冷たい冬を暖かく照らすんだ

そう、その事を僕はちゃんと知っている
いや、その事を皆はちゃんと知っている


だって夢想銀河は誰だって持っているんだから


明日の夜には、あの影から君も行くと良いんだよ